「公園の中に住む」感覚の団地
現在、マンション暮らしの我が家族。
子供の頃に団地住まいだった私からすると、なかなか近くで子供を遊ばせる場所がないことが不満な部分でもあります。
川沿いに住んでいるので、オープンスペースとしてはたくさんあります。
ただ、遊具で遊んだり安心してボール遊びをする場所となると、少し足をのばさなければいけません。
その点、団地は階段から降りればだいたい近くに多種多様な公園があります。
お気に入りの遊具のある広場、ボール遊びのできる広場、かくれんぼに適した広場、など子供の頃はよく遊び方によって団地内の公園を使い分けていました。
また、今の生活では近くのオープンスペースに行くとしても大きな道路を渡らなければならず、心理的負担があります。
団地は、歩車分離がされているものも多く、安心して移動することができます。
「公園の中に家がある」という表現がぴったりな居住環境ではないでしょうか。
住みこなせる家
団地の平均の1戸あたりの面積は、約40〜60㎡であり、現在の居住水準と比較すると
狭い住宅と言えるでしょう。
自分が子供の頃は、自分の部屋も持てず不満を持っていました。
しかし、大人になり感じたことは「狭いからこそ、気遣いをしながら暮らし
家族の絆が深まる家」と言えるのではないかと思っています。
友人の話を聞いても同様です。
単に狭い家に住めば良いという話ではありませんが、今の住宅事情は
個人の事情に合わせた間取りが強調されがちですが、与えられた環境を
「住みこなす」ことが豊かに暮らす秘訣なのではないかと感じています。
そういった意味でも、団地の画一的な間取りは「住みこなす」という視点では
今の住宅市場の中では貴重な存在なのではないかと思います。
※UR都市機構ホームページより
可変性のある暮らしとコミュニケーション
私の子供の頃の生活を思い出すと、家の使い方が時期に応じて変化していました。
小さい頃は、私と弟が母の横で寝ており、父がリビングで寝ていました。
しかし、子供が大きくなると(中学から高校)今度は母がリビングで寝るようになりました。
子供の世話を見る→弁当などの朝の支度をすることが、母の行動の中心に変わっていったからだと推測されます。
当時は母も専業主婦で、まだ女性が家事の大半を担う時代であり、今の家庭での
役割と少し異なっていたと思います。
しかし、子供が大きくなるにつれ、生活リズムが家族の間で少しずつずれていく中で、「誰々の寝室はここ」ということが固定化されていなかったことが、我が家ではスムーズに暮らしを回していくことができたのではないかと思っています。
私が就職して家を出てからは、空いた部屋を学生だった弟が使っていました。
マンションや一戸建てでは、子供部屋を与えることが一般的ですが、独立した後は空き部屋になっていることは珍しいことではありません。
団地においては、少々狭く部屋が足りないと思う時期があったとしても、短い期間ですし、やりくりをしながら生活をすることで逆にコミュニケーションをとることができていたのかなと感じています。
団地には脱衣所がない
団地には、明確な脱衣所がありません。
たいてい、風呂の前や横で服を脱いでそのまま風呂に入ることが
多いのですが、風呂の横は玄関です笑
自分の子供の頃を思い出すと、玄関に洗濯物が散乱している
光景をよく覚えており、来客がある際などは母が慌てて片付けていたのを
思い出します。
団地には、用途が明確に決められていないスペースが多く、
住む人の工夫次第でどんな使い方も可能です。
それが家の中の「間」として、効果的になっているのではないかと思います。
団地の住まい方(日常編)
団地の間取りを見ると、明確な「脱衣所」がなかったり、ダイニングと言っても狭く、テーブルを置くスペースが十分に取れなかったりします。
そこで、テーブルをちょっとずらしたり、誰かが着替えている時にはあまり近づかなかったりと日常的に「気遣い」をすることになります。
私の主観もありますが、調査の中でもそういった気遣いをせざるを得ない環境が、後になって振り返ると逆に良かったという意見がありました。
家族があまり気を遣わないでも過ごせる快適な家よりも、少し制約のある環境がある意味子どもの成長段階では重要なのかもしれません。
団地の住まい方(事例)
前回、団地での生活は不自由があるものの、コミュニケーションを図る上では有効な面も見られるのではないか、という話をしました。
ここから、少し事例を見ながら話をしていきたいと思います。
下の写真は、とある家庭の住まい方の変遷です。
(と言っても我が家なのですが。。)
上の写真は、子ども二人が小学生、下の写真はその約10年後の家の使い方の写真です。
まず、初めの写真で特徴的なものは、以下の点が挙げられると思います。
1、母親と子どもが同じ部屋で寝ており、父はリビングに布団を敷いて寝ている。
2、子ども部屋はまだ与えられていない。
3、食事用のテーブルはなく、その都度テーブルを出している。
下の写真では、
1、長男に部屋が与えられている。
2、リビングで寝ているのは、父から母へと変化した。
3、相変わらず、次男は自分の部屋を持つことができない。
ここでわかる「不自由さ」としては、
1、リビングで親が寝ていること
2、子ども部屋がなかなか与えられず、次男は特に長男が家を出るまで自分の部屋を持てなかったこと
が挙げられます。
あとは、全般的に脱衣所がなかったり、防水パンがなく洗濯排水は風呂場に流していたことなども、不自由さとして挙げられています。
このことに対する意見については、次回以降でまとめていきます。
団地の住まい方
私は、大学の卒業論文で団地の住まい方の調査をしました。
一般的に団地は狭いと言われながら、長く住んでいる人も多く、まわりで同じ団地に住んでいた知り合いからも「団地は住みやすい」という話をよく耳にしていました。
私の母親も、窓が多く通気が良いところなど団地は住みやすいということをよく言っていました。
どういったところが住みやすいのか、詳しく知りたいと思い、約20件ほどヒアリングを行った結果、以下のような傾向が見られました。
1、窓が多く通気が良い、屋外空間にゆとりがあるなどの「環境」に関すること
2、スーパーなどが近くにある「利便性」に関すること
3、狭いがゆえの家族との「コミュニケーション」に関すること
1や2に関しては、親世代からの意見が多く3に関しては同年代(当時20代前半)からの意見が多い傾向が見られました。
狭くて自分の部屋も与えられないことに当時は不満だったものの、振り返ってみるとそれが逆に家族がよく顔を合わせることにつながり、よくコミュニケーションを取ることができた、というプラスの面ととらえていることがわかりました。
団地からマンションに移った友人は、個室が与えられたものの団地の方が良かった、とまで言っていました。
このようなことから、もしかしたら団地での住まい方は不自由な面があるものの、家族がコミュニケーションをとるには適した住宅なのでは、と思い至るようになりました。